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2023.12.24
デジタル技術の急速な進化に伴い、企業がデジタル人材に対する需要が高まっています。しかし、この需要に対してデジタル人材の供給は不足しており、多くの企業が適切な人材を確保することに課題を感じています。この背景には、テクノロジーの進歩に迅速に適応できるスキルや知識を持つ人材が限られていること、教育システムの変革が追いついていないことなどが挙げられます。
これからの時代において、企業がデジタル人材不足に対処するためには、教育・研修プログラムの充実や、既存の従業員のスキル向上のための仕組みの整備が不可欠です。また、多様な人材を引きつけ、育成するためには、働き方や雇用条件の柔軟性を高めることも必要でしょう。
この記事では、デジタル人材不足の現状を踏まえ、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応するための具体的な対策を考えていきます。
現代社会では「デジタル」という言葉が当たり前に用いられますが、そもそも「デジタル」とはどのような意味を指し、デジタル人材とは、どの様にデジタルを扱うのでしょう。
筆者の調べによると、デジタルとは「物質・システムなどの状態を,離散的な数字・文字などの信号によって表現する方式」という意味でした。個別具体のそれぞれの状態を数字や文字などを組み合わせ、連続させることにより、より端的かつ明確に、そして迅速に表現することをデジタルと呼ぶようです。
一方でデジタルの対義語は「アナログ」です。「アナログ=古い」という認識が一般化されていますが、正しくは、物質やデータなど個別の状態を個別のまま扱うこと(連続性がない)を指します。
デジタルは連続性がある、アナログは連続性がない、と理解しておくと良いでしょう。
社会や仕事、暮らしやトレンドの移り変わりがとても速い現代社会。この社会を創り上げている要素のひとつがデジタルの力です。
世の中においてデジタル技術が急速に高まったのは20世紀後半。コンピューター技術やITという概念が浸透し始め、仕事や生活の利便性が高まりました。
この時、デジタルがもたらした成果は「紙ではなくデータで保存することで場所を有効的に使える」「アナログ管理の帳票をデータ管理することで検索利便性をあげる」といった、「アナログをデジタルに変換する」というものでした。
そんな「デジタル時代」と呼ばれた20世紀後半を過ぎ、時は21世紀。今、デジタルの力は、アナログからの変換だけではなく、ビジネスや生活、エンターテインメントなどより多くのシーンで期待されています。
デジタルのメリットは「アナログを変換して利便性を上げる」というだけではありません。今後、デジタルに期待されるのは、「デジタルデータを元に業務を改革し、新しい価値を創造する」という点です。
これまではアナログという個別の状態を、数字や信号などを駆使してデータ化することをデジタルの価値としていましたが、これからは、デジタル化された状態のものを変換したり、他の技術と融合させて新しいサービスを創出することが期待されているのです。
例えば、これまでのデジタル化で蓄積してきた情報を用いたマーケティング(デジタルマーケティング)を行うことで、商品やサービスの市場競争力を高めたり、新しい商品の開発に繋がる可能性があります。
今後のデジタルは目の前の利便性向上だけではなく、未来を見据えた価値の創出が期待されているのです。
昨今、デジタルと切っても切り離せない概念として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という考え方が世の中に定着しました。現在、あらゆる企業で「DX推進」という施策が注目され、推進されています。
DXは一歩踏み込んだデジタル推進です。トランスフォーメーションは日本語で「変化」や「変革」を意味します。デジタルやテクノロジーを駆使して、ビジネスの行程や生活の質、芸術・文化といった価値観など、変わり続ける社会においても、新しい体験を生み出すことで、顧客の要求にこたえ続けることを目的としています。
このDX推進の観点でも、企業の今後の成長にデジタル人材は欠かせない存在と言えるでしょう。
これまで述べてきた通り、デジタル人材とは数字やデータを正確に扱うだけでは約不足です。それらを用いて、業務改善を図ったり、ビジネスの行程をよりスムーズにしたり、これまで会社が積み重ねてきた実績を応用して新たなサービスや商品を開発するなど、デジタルを活用した変革の実現が求められます。
今後の企業成長や社会の発展に欠かすことができないデジタル人材。デジタル技術の進化の傍ら、実は日本のデジタル人材の不足は深刻な状況です。
経済産業省の調査によると、日本のIT人材は最大で79万人不足する、とされています。ITとはInformation Technologyの略です。ITはコンピューターを使った情報処理や情報の活用・運用といった全般的な技術面を意味します。一方、デジタルはそれらIT技術を用いた、体験や価値、戦略に対して用いられることが多いのが特徴です。
ITは作り手、デジタルは使い手の立場で用いられることが多く、手段と目的の関係性と表すことができます。要するに、IT人材の不足は、デジタル人材の枯渇にも繋がる大きな損害と言えるのです。
現代社会は、テクノロジーの発展やSNSの隆盛などにより国内だけではなく、世界各国との繋がりが身近なものになっています。IT人材、デジタル人材は、日本の産業や日本企業が世界的な競争力の維持・向上に不可欠な存在なのです。
経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」に「2025年の崖」というキーワードがあります。このレポートの中では、日本企業が今後生き残っていく為にはDX推進が不可欠とされています。
DX推進ができずに企業競争力を失った場合の経済損失が2025年以降年間約12兆円に及ぶ、とされており、この予測のことを「2025年の崖」と呼んでいます。
なぜ、2025年が基準になっているのか。理由は主に2つです。
内閣府の調べによると、2025年には75歳以上の高齢者が2180万人、65歳~74歳までの高齢者が1497万人に達すると予測され、国民の3人に1人が65歳以上の高齢者となるとされています。
社会構造上、医療や福祉の面でよりITやデジタルの技術に期待が寄せられる一方で、デジタル人材育成の側面において、これまで企業のIT部門で活躍してきた人材が現役を退くことにより後任の育成が滞ることや、一人当たりの業務負担が増加するリスクがあります。
ERPとは企業の基幹システムのことを指します。多くの日本企業は古くからあるERPを用いて活動を行っており、これらのシステムの多くが2025年前後にサポート期間を終了することが予測されています。
新しいERPの導入や活用、運用の面で、デジタル人材による推進が不可欠とされていますが、前述の通り、人材自体が不足している為、スムーズな移行を期待できない企業も多く、結果的にビジネスに支障をきたし損失を生むリスクが懸念されているのです。
現代社会において必要不可欠なデジタルの力。その期待は企業活動だけではなく、生活やエンターテインメントなど多様なカテゴリーに及ぶこと、また、これらの旗振り役であるデジタル人材が慢性的に枯渇している現状を述べました。
もはやデジタル人材に限った話ではありませんが、日本は今後も労働人口が減少していくことが予測され、その中でも企業のDX推進によりデジタル人材の獲得や育成は困難が予想されます。
この様な現状の中、企業はどの様にデジタル人材を育成すべきなのでしょうか。
あらゆる産業、企業で必要とされているデジタル人材を中途採用などで獲得することは容易ではありません。まずは、在籍しているデジタル・IT人材のレベルアップを図ることを考えましょう。
具体的には
といった施策が必要です。
現状、どうにかデジタル化に対応できている企業においても、先を見据えた新しいシステムの導入や検証などを通じて、セミナーや研修などで収受した知識を業務でアウトプットすることでデジタル人材の育成を図りましょう。
会社と人材の関係性はコンピュータのOSとアプリの関係に似ています。
OSをアップデートしなければアプリが起動しない原理と同じく、優秀なデジタル人材が育ったとしても、そのスキルを活かす土壌や環境が無ければ人材は機能しません。デジタル人材の需要は高まるばかりですので、優秀なデジタル人材は他社からのオファーがあれば転職を考えるかもしれません。
育成したデジタル人材のスキルを存分に発揮してもらう為には、デジタル・DXの担当部署だけの推進ではなく、全社的な理解と環境整備が必要です。
企業の規模が大きくなればなるほど、理解を求める為の労力はかかりますが、企業成長に必要な要素として理解促進に努めましょう。
デジタル人材に求めるスキルは事業内容や推進するプロジェクトによって異なります。
ITに関する基礎知識やプログラミングのスキルはマストと考えておきましょう。育成する場合もこれらの知識の深堀や向上を促し、ITリテラシーを強化することが大切です。
また、昨今ではデータを使ったマーケティングスキルも重宝されています。また、商品やサービスの機能性に関係するUIやUXに関する知識を求められることも多くなっています。
デジタル人材は事業のデジタル化を推進する役回りが期待される為、ITの知識やスキルだけではなく、他部署との調整能力やプロジェクトを率いるリーダーシップといった人物面も備わっていれば、デジタル人材として長く活躍ができるでしょう。