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2024.2.10
現代の企業経営において、デジタル技術の導入は必要不可欠です。それだけに留まらず、企業の競争優位性を確立させ、新たな価値や体験を提供する施策がDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
データドリブン経営は、そのようなDXを支える施策の一つと言えます。
本記事では、データドリブン経営が会社に与える影響、そして推進していくための方法について解説します。
企業はビックデータ、売上データ、顧客データ、Web解析データなど、日々さまざまなデータを収集しています。それらのデータを分析し、企業の成長につなげるのがデータドリブン経営です。
データドリブンにおいては、ビジネス上で収集・蓄積したデータを起点として、戦略や方針を決めていきます。
従来は経営者の経験や勘を元に、経営判断がなされてきました。ですが、感覚だけで意思決定するよりも、データ分析に基づいた意思決定をする方が、失敗リスクが少なくスピーディーに対応できます。
そのため、近年はデータドリブン経営を導入する企業が増えているのです。
データドリブン経営による組織運営では、経営者の経営年月が短くても、データをしっかり分析することで、素早い判断が可能になります。また、収集したデータを基に、今まで気づかなかった自社の強みや課題を把握できれば、新規ビジネスやサービス展開にもつなげられます。
ビジネス変化のスピードが加速する昨今において、データドリブン経営は必要不可欠なのです。
データドリブン経営が求められる背景には、消費者ニーズやビジネス環境の多様化、急激な変化が影響しています。
WebやSNSの広がり、オンラインショッピングの一般化により、顧客が得られる情報量が増加しました。その結果、顧客の行動パターンやニーズが多様化・複雑化し、パーソナライズされたサービスを提供することが、ビジネストレンドとなっています。
顧客のパーソナライズされたニーズに応えるには、大量のデータを適切に分析・活用し、精度の高いマーケティング戦略や商品開発が求められます。
消費者のニーズや行動の多様化に伴い、業務やオペレーションも複雑にならざるを得ないのが、現状です。業務効率を向上させるためには、膨大なデータを収集・分析し、迅速かつ的確な判断が求められます。
データドリブン経営はこれらを促進させ、企業の競争力を高める手段として、注目されているのです。
生成AIは大量のデータを効率的に分析し、有益な洞察を提案してくれるなど、データドリブン型の意思決定に有効と言われています。
特に2023年以降、ビジネスシーンでAIを利用する企業が増えつつあります。また、大量のデータ分析も得意であり、パーソナライズされたコンテンツ生成にも適しています。顧客エンゲージメントを高めるのにも有効であり、データドリブン経営にも活用しやすいでしょう。
データドリブン経営を実践することで企業が得られるメリットは、経営の改善や体質改善、ひいては企業の成長などが挙げられます。
従来は経験則や仮説に頼っていた部分が、データの可視化により、科学的なエビデンスに基づいた経営判断が行えるようになります。
顧客行動が多様化し、一人ひとりの顧客に対してパーソナライズな対応が求められる中で、企業は、費用対効果が高い施策を打ち出さなければなりません。
企業がさまざまなデータを分析することで、より費用対効果の高いアクションプランにつなげられるのです。
データドリブン経営は、売上向上につながるだけでなく、生産性の向上や業務効率化の実現にもつながります。また、取得データから自社の課題が見つかることもあります。
例えば、勤怠データやサーベイデータから社員の隠れた不満を洗い出し、素早く対応することで、社員のエンゲージメントを高めたり、生産性向上につなげたりすることも可能でしょう。
データドリブン経営は、データ収集・分析を基にした意思決定をするだけでなく、「ビジネス成果」を残すところまで目的に含まれます。データを活用することで、以下のような効果が生まれると考えられます。
データドリブン経営を推し進めるには、社員にデータ分析スキルを身に着けさせるのが大切です。
データ分析に必要なスキルは、以下の3種類です。
これらのスキルは、そのスキルを有している専門家だけでなく、社内全体で共有できるようなシステム構築が望ましいと言えます。
社員全体のデータ分析スキルを向上させるには、次のような案が考えられます。
また、データ分析スキルに長けた社員の育成を図ると同時に、データ分析の専門家である「データサイエンティスト」の力を借りるのも、有効です。
分析スキルに秀でた人材の採用・育成は、ビジネス戦略の策定や、競合他社との差別化につなげられます。
また、専門家を招いた勉強会や資格取得支援制度の充実など、企業が積極的に社員の学習をサポートする施策も、社員及び企業の成長を促すでしょう。
実例としては、全従業員を対象としたデジタル人材育成の研修やeラーニング、資格取得促進などの施策を実施しており、PDCAを回す取り組みを継続的に行っています。
データドリブン経営を進めるには、さまざまな専用ツールを利用して施策を進めるのが一般的です。
データドリブンに必要なデータ収集、管理、蓄積、分析ツールには、以下のようなものがあります。
ツール名称 | ツールの内容 |
MA(マーケティングオートメーション) | 獲得した潜在顧客の情報を管理し、メールマーケティングやウェブサイト改善などのマーケティング活動につなげるツール
おもにマーケティングのリード育成部門が使用する。 |
SFA(セールスフォースオートメーション) | 顧客情報を始め、営業のプロセスや進捗状況をデータ化して蓄積し、共有できる業務支援システム
おもに営業部が使用する。 |
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント) | 顧客のパーソナルデータや購買履歴などの情報を管理し、分析するツール
おもにCSや既存顧客営業部が使用する。 |
DMP(データマネジメントプラットフォーム) | 顧客データやネット上のログなどから、顧客の興味関心や好みを分析できるプラットフォーム
おもに情報システム部で使われる。 |
BI(ビジネスインテリジェンス) | 企業内のビックデータを分析・可視化するソフトウェア
おもにマーケティングの解析部門で使われる。 |
Webアクセス解析ツール | 自社のWebサイトの検索順位やPV・UU数などのアクセス状況を分析し、サイト上のユーザーの行動を可視化するツール
おもにマーケティング部で使われる。 |
ERP(エンタープライズリソースプランニング) | 企業活動における全ての情報を連携・集約した、統合基幹業務システム
おもに生産管理や在庫管理が必要な企業で使われる。 |
どのツールが必要になるのかは、業務フェーズによって異なります。導入前は、利用目的を明確にし、必要な機能を洗い出していかなければなりません。
各種システムを選定するに当たっては、導入目的を明確化し、必要な機能を絞り込んで選定するのが大切です。
データドリブンに必要なツールの目的と、それに応じたツール例は以下のようなものがあります。
ツールの目的 | 製品名 |
データ蓄積/管理 | Google Cloud Storage, Microsoft Azure Storage |
データベース管理 | MySQL、PostgreSQL |
データ分析 | Google BigQuery、Apache Hadoop |
マーケティング | Google Analytics、HubSpot |
機械学習・AI | TensorFlow、PyTorch |
多くの企業では、前述のように多種多様なデータを蓄積しています。それらのデータは情報資産であり、適切に管理・活用することが、これからのDXの時代において、企業の生き残り戦略には必要不可欠です。
仮に放置したままにすると、デジタル競争の敗者となるだけでなく、従来のシステム維持管理費が高額化し、財務に悪影響を与えかねません。
データドリブン経営の導入や推進は、困難を伴う局面も多いものです。ですが、市場の不確実性や消費者ニーズの多様化・複雑化が加速している現代において、「データ分析に基づいた意思決定」は、必須項目でしょう。
今回の記事が、データドリブン経営の導入へつながり、企業経営の一助となれば、幸いです。